大変遅ればせながら、前回の記事の「ヒューマニエンスQ(クエスト)」についてです。
まずは番組を見て考えさせられたのが、新型コロナウイルスの感染拡大が及ぼした、ひとの心への影響でした。
今回は、番組を通じて、コロナ禍とスキンシップについて考えてみました。
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番組前半、主に解説くださる京都大学大学院教育学研究科教授、明和(みょうわ)政子さんは、ひとの心とからだの発達と皮膚感覚(触覚)の関わりについて研究されており、2022年3月6日の朝日新聞では、コロナ禍におけるひとの脳や心の発達について述べていらっしゃいました。
番組においても、子どもたちは「他者との身体接触を通じて、その相手がどんな心を持っているのかということを直接的に学ぶ機会」を得ているとおっしゃっています。
さらには、「妊娠7週頃からひとの胎児は様々なものを触れるふうな行動」をとることが分かっており、五感の発達の順では「触覚」が最初、「胎児期から新生児期にかけては、特に触覚経験が赤ちゃんの脳の発達をけん引する(促進する)重要な役割を果たしている」とおっしゃいます。
出産後の親子のスキンシップがいかに大切なことか想像していただけるでしょうか。
赤ちゃんは見ること・聞くことよりも、まずは触ることが得意で、触れてこの世界のひと・ものの情報収集を行っていき、その情報から脳、心とからだを育み始めているのです。
ゆえに、明和さんはコロナ禍による心配事として「脳が発達途上にある子どもたちへの影響」を挙げていらっしゃるのです。
未就学児施設や学校でも、子ども同士や関わるおとな、家庭での親子間ですら接触を避けることが優先されたこの三年間に、コロナ禍の習慣から抜け出せなくなっている、他者との触れ合いを苦手としたり、マスク無しではもはや嫌だと思う子どもたちが現れているかもしれません。
実際に、1月20日、今春には新型コロナウイルスを、2類から5類へ引き下げる検討がされるとの報道のなかで、MBS(毎日放送)のニュースでは、屋内でもマスク着用が原則不要となった場合について、大阪市内の中学校でインタビューをしていましたが、マスクが習慣化しているので外さない、マスクを外してよくなるのは嬉しい反面、顔を出すのは恥ずかしい、抵抗がある、という生徒の声がありました。
マスクの着用だけでも、すぐに外したい子がいる一方で、先のように難しさを感じている子がいます。
これをコミュニケーションのうえで考えると、すぐに会食や会話を大勢でも楽しめる子と、そのことに不安や苦痛を感じてしまう子がいるとも考えられます。
さらにコロナ禍当初、物心のつかなかった頃から成長した子どもたちは、いわゆる‘コロナ前’が未知世界であるため、子どもの順応性を発揮してすぐにコロナ禍の習慣から抜け出せる子と、難しいまま成長する子との別が顕著になってしまうかもしれません。
もし、withコロナが進むなかで、コミュニケーションが苦手となってしまった子ども・おとなに出会ったら配慮せねばなりません。
特に他者と触れ合うことが苦痛になっている場合は、コロナ禍でそうならざるを得なかったという理解が大切です。
家庭内で、お子さんが触れ合うことに不安を感じさせるときは、手をとってあげてみたり、優しく抱きしめてあげてみたり、背中をゆっくりさすってあげてみたりと、親御さんのほうから触れ合ってみてください。お子さんのペースやタイミングを尊重し、嫌がるときは無理強いをせずに。手遊びを取り入れてみるのも良いですね。
触れ合うことは怖いことじゃないんだよ、と親御さんが向き合い接するうちに家庭で慣れれば、外でもお友だちとも触れ合えるようになる子もいます。
「皮膚」をテーマにしたこの番組からwithコロナに向けて、皮膚の「触れ合い(スキンシップ)」という重要なはたらきを見直すきっかけとなれば、と私は願わずにはいられません。
最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^^*)
/画像提供:PAKUTASO